2017年の司法統計によれば、離婚の際に父親が親権を獲得したケースはわずか9%となっていました。
実際に父親が親権を獲得するのは非常に高いハードルとなっていますが、少しでも親権獲得をするにはどうすれば良いのか、ポイントを解説していきます。
◆父親が親権を獲得しにくい理由
父親が親権を獲得することが難しい理由はいくつかあります。
まず代表的な理由としては、フルタイムで働いているため、子どもの面倒をなかなか見ることができないからというものがあげられます。
ほとんどの家庭では父親がフルタイムで仕事をしており、子どもの面倒を見られていないというケースが多くなっています。
特に子どもが未就学児の場合には、保育園や幼稚園などである程度面倒を見てもらえる可能性はありますが、施設の最終時刻までに迎えに行かなければならないため、ここが難しい点となります。
次の理由としては、子ども自身が母親を親権者に選択する傾向があるという点です。
基本的に父親が仕事に専念している場合には、子どもは母親と共に過ごす時間が長くなるため、母親に愛着を持ちやすくなっています。
そのため親権選択の際には、母親が選択されるというケースが非常に多くなっています。
◆父親が親権を獲得するためのポイント
親権を獲得する際には、子どもの養育実績、子どもの意思、現状の生活の維持といったものなどが重要視されることとなります。
●子どもの養育実績
親権者を決める際には、子を安定的に養育してきたという実績が極めて重要視されています。
この点が父親にとって非常に難しい点となります。
父親が親権を主張する際には、単独もしくは母親と共同して子どもを養育してきたという具体的な事実を証明する必要があります。
もし別居をしている場合には、子どもとの同居期間がある程度継続しており、かつ単独で養育ができており、その養育状況が安定しているという事実が重要となります。
また、父親1人で子どもの養育をするのは非常に難しいため、周囲に養育をサポートしてくれる人がいることも判断要素となり得ます。
自身の親や兄弟などが継続してサポートしてくれる場合には、プラスの要素として働きます。
●子どもの意思
次に子どもの意思です。子どもが12歳以上などのある程度判断能力が備わっている年齢になった場合には、親権の決定に子どもの意思が尊重されることとなります。
もっとも子どもの意見はあくまで参考意見であるため、この意見が決め手になるようなことはありません。
そのため、子どもに自身を親権者として選ばせるように仕向けたり、母親の悪口などを子どもに吹き込むようなことは悪手となるため避けた方が良いでしょう。
●現状を維持できるか
子どもは環境の変化に繊細な傾向にあるため、現状の環境を維持することができるという点が重要となります。
母親が親権者となった場合には、一般的に現在の住居に父親が残り、子どもと母親が引っ越しをするということが考えられるため、転居や転校が必要となります。
しかし、父親が親権者となった場合には現在の住居や学校での生活を継続することができるという場合には、父親の方が親権者として相応しいということになります。
●子どもの面会交流に積極的か
例え非親権者であっても、子どもにとって親であることに変わりはありません。
そこで自身が親権を獲得した場合であっても、子どもと非親権者の面会に積極的であるということが重要となります。
特に相手の不倫などが理由で離婚した場合であっても、夫婦間の問題と子どもの養育は別問題です。
そのため、裁判所は子どもの面会交流の機会や時間が適切に確保されているかどうかという点を、判断の際に重視します。
◆母親の監護能力に問題がある場合に
上記で示したこと以外に、母親の監護能力に問題がある場合には、父親にとって有利に働きます。
例えば母親が子どもに対して日常的に精神的、肉体的な暴力を振るっている場合や母親に浪費癖があり、子どもの経済的な安定性が阻害される場合、母親が精神疾患や薬物依存などで判断能力が喪失、減退しているような場合には、監護能力に問題があると判断されます。
もっとも、このようなケースでは、父親も子どもに悪影響があるとして親権を主張するケースがほとんどであり、裁判所からも養育をするのに相応しくないと判断するため、父親に有利に働くこととなります。
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